百田 尚樹 著 「永遠の0」読了。

★★★★★★★★★☆


今年読んだ中で最高の小説でした。


内容(「BOOK」データベースより)

「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」。
そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか。
終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。
天才だが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、
一つの謎が浮かんでくる―。
記憶の断片が揃う時、明らかになる真実とは。
涙を流さずにはいられない、男の絆、家族の絆。


2005年に読んだ「男たちの大和」での戦艦大和
http://d.hatena.ne.jp/gougejp/20050617/1285634148


2006年に読んだ「出口のない海」での人間魚雷回天
http://d.hatena.ne.jp/gougejp/20060721/p1


そしてこの「永遠の0」での特攻隊。


ほんとに知るたびにどうしようもないくらい悲しくなる戦争の悲劇。


どれも共通しているのは、
現場の人間は真剣に、純粋に、仲間のために戦い、
指令本部(大本営)や一部のエリート達の、
保身や無知による身勝手な作戦のために殺された、というところか。


これらの本を読む前は、
「特攻」の意義や特攻に志願する人の気持ちなんて全く理解できなかったけど、
今は時代背景も含め、どうして特攻で飛んで行かなければならなかったのか、
よくわかる気がする。


この「永遠の0」では、
アメリカと日本のリーダーの違い、
責任の取り方の違い、
戦員、現場を大事にするかどうかの違い、
それらの違いにも焦点を当てていてとても興味深い。


そして、特に面白かったのが
日本とアメリカにとっての戦争を
将棋と碁に例えたあたりだろうか。


日本は将棋、そして戦国時代の戦争のまま、
敵の大将を取れば勝ち、だと考えていた。
という点。


日本が無謀な戦争を始めた理由はここにもあるのかもしれない。


まぁちょっとアメリカを持ち上げすぎてる感もあるけど・・・



そしてもう1つ、新聞、マスコミの「煽り」。


戦前は弱気な政府を叩き、軍国、愛国主義、戦争に煽りたて、
戦争が終わった途端にGHQ万歳、民主主義至上主義、
国のために戦った兵隊を戦犯だとこき下ろした、と。


これも日本を暴走させた1つの要因なのかもしれない。



こういう
リーダー、一部のエリートが保身しか考えず責任を取らず、
現場を駒のように扱い、ろくな成果を出さない、
とか、
マスコミの煽りとか、
今の政治を見ていると全く変わってないように思えてしまう。


尖閣関連の報道なんて見ていると、
少し恐ろしくなってしまう。



とにかく、
この本は特攻という悲劇を、
生き残った人々から聞く祖父という1人の人間を通して
(この人間がまたとんでもなく魅力的なのだが)
とてもわかりやすく、そして感動的に伝えている。
そして圧倒的なラスト。
小説としての面白さも忘れていない。


こんなに辛い出来事なのに、
一気に読みきってしまうのはこの筆者の力としか思えない。


しかも、これがデビュー作とのこと・・・



すごい。



今年読んだ中で一番感動した小説。


オススメです。

永遠の0 (講談社文庫)

永遠の0 (講談社文庫)